テーマコラム

相談を受けるときに弁護士が考えていること、事件を担当するなかで弁護士が考えていることを綴ります。

相続・遺産分割コラムvol.1 相続の基礎の「き」

「相続」って言葉はよく聞くけれど,具体的にどういうことかわからない,何から聞いたらいいのかわからない,という方もいらっしゃると思います。

 そこで,今回は「相続」に関する基礎知識の基本中の基本についてご紹介したいと思います。ポイントは大きく3つです。

1.「相続」=権利義務の承継

 そもそも「相続」とは,簡単に言うと「亡くなった方が,亡くなった時に持っていた権利や義務をそのまま受け継ぐ」ということです。
 このとき,@亡くなった方のことを「被相続人」,A亡くなった方が亡くなった時に持っていた権利や義務を「遺産」,Bこれを受け継ぐ人のことを「相続人」と呼びます。

2.亡くなった場合に必ず開始するもの

 「うちは財産なんて立派なものはないから,相続なんて関係ないんです。」と言う話を耳にすることがあります。
 ですが,財産が多くても,少なくても,関係なく「相続」は始まります。たとえば,マイナスの財産,つまり借金や債務しかない場合でも「相続」は開始するのです。一般的に相続で問題となることが多いのは,土地,建物,預貯金などのプラスの財産,借金や損害賠償債務といったマイナスの財産です。
 「終活」という言葉が流行っていますが,このように,相続が当然に始まるものであることからしても,亡くなった時に相続される可能性がある財産について,ご自分で予め考えておくことは,とても大切なことなのです。

3.遺言か法律か

 「相続」するときの財産の受け継ぎ方,分け方については,大きく2パターンあります。
 まず,1つは「遺言」による相続です。
世間では「ゆいごん」と言われますが,法律的には「いごん」と言います。遺言とは,自分が亡くなったときに,遺った自分の財産を,誰に,どのようにあげたいか,決めることができる文書のことです。遺言が作られていれば,これに従って財産が受け継がれることになります。これを「遺言相続」と言います。
 次に,もう1つは「法律」による相続です。
 遺言が作成されていない場合は,民法という法律が定めたルールに従って遺産が受け継がれることになります。遺産を受け継ぐことができる人は誰なのか,どういう割合で受け継ぐのか,といったことが民法では規定されています。これを「法定相続」と言います。
 このように,「遺言」があれば「法律」のルールより優先することになります。それは,亡くなった方の意思を尊重してあげようという考え方があるからです。
 ただ,注意してほしいのは,ちゃんと効力のある「遺言」を作るためには,色々と決まり・方式がある,ということです。これに則らずに遺言を作成しても,無効すなわち効力が無いものとして,法律のルールが適用されてしまう場合があるのです。遺言の決まりや方式については,別のコラムでお話ししたいと思います。

 以上が相続の基礎知識の基本中の基本になります。

弁護士 本條 裕子