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相続・遺産分割コラムvol.2 遺言の書き方〜その1 自筆証書遺言@

 コラムvol.1で,相続には,「遺言相続」と「法定相続」があるとご説明しました。

 そもそも,遺言とは,自分の生涯をかけて築き,かつ守ってきた大切な財産を,最も有効・有意義に活用してもらうために行う意思表示です。
 遺言の方法は,まず大きく分けて2つ,@普通方式とA特別方式があります。
 特別方式は死期が迫っている場合など特殊な状況下にある場合の例外的な方式であり,普通に遺言を作成する場合は普通方式によります。
 そして,普通方式の遺言には3つの種類があります。自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言です。
 今回は,その中でも自筆証書遺言の書き方について説明しましょう。

1.誰が遺言を書けるの?

 まず,未成年者であっても,基本的に満15歳に達すれば,有効な遺言を書くことができます(民法961条)。この「有効な遺言を書く」ことができる能力を「遺言能力」と言い,遺言をする時にはこの能力が必要で(民法963条),これを欠く場合,遺言は無効と判断されることになります(遺言の無効については,別のコラムで書きます。)。

2.どうやって書くの?

 さて,次に書き方です。
 自筆証書遺言の場合,作成場所はどこでもOKですが,落ち着いて文書を書ける場所が良いでしょう。ポイントは大きく3つです。
 紙とペンを用意し,@遺言の内容を全文,自筆で書きます。パソコンで印字した内容の最後だけ署名・押印してもダメですよ。
 途中で文章を書き間違った,というときも注意してください。訂正方法は法律で定められていて,方式どおりでないと,内容が無効になったり,効力を争われる可能性もあります(実際に最高裁まで争われたケースがあります。)。ですので,文章を間違えた場合は,念のため,最初から全部書き直す方が安全ですね。

 文書の最後に,忘れがちですが,A日付を必ず書いてください。「昭和四拾壱年七月吉日」と日付を記載して,日付の記載が無いから無効とされた判例がありますので,「吉日」という表現は止めて,必ず日付を書いてくださいね。

 そして,B署名と押印。印鑑は実印である必要はありませんが,偽造を防ぐ意味では,三文判は避けた方がよいでしょう。印鑑が無い場合は,拇印でも構いません。

 これで遺言の完成です。

3.書いたら一安心?

 しかし,こうやってきっちりと遺言を書いたとしても,それでも後々揉める場合もあります。

 まずは,そもそも遺言を発見してもらえない場合があること。
 遺言の保管場所は,自宅内であれば,金庫や机・タンスの引き出し,仏壇等が考えられると思います。見つかりやすいように,家族が探してくれそうな場所に遺言の在処のメモを残しておくこともあります。

 次に,A書いた内容が法律的に疑義がある場合です。
 どういったケースがトラブルになったか,具体的な例は,次のコラムvol.3でご紹介します。

弁護士 本條 裕子